コリコリ食感が病みつきになる希少部位「ハラカワ」
「牛一頭で200gくらいしかとれない部位がある」と安堂光明会長。-25℃の冷凍庫から持ってきてくれたのは、この白い塊です。これが1kg、つまりこれで5頭分だと言います。
この部位の名前は「ハラカワ」といいます。その名の通り、腹にある皮ですが、腹筋の内側で内臓を守っている皮なので、外から見ることはできません。別名を「ハラミスジ」「メンブレン」。皮のように見えますが、実は硬いスジです。
まず焼肉にしてみる
料理法をいろいろと調べてみると、やはりスジなので下茹でをして柔らかくするのが一般的のようですが、そのまま焼いても「コリコリして美味しい」との記事を発見。まずはそのまま焼いてみました。
スジには白い脂が何層にも重なってついています。火で炙ると勢いよく炎が上がり、香ばしい匂いがしてきました。まずはシンプルに塩・こしょうで実食。
口に入れると、まずは脂からなんとも言えない旨味がジュワーっと出てきて、脂好きにはたまらない美味しさです。しかし、スジはやはり硬い。それでも強く噛むと、コリコリというか、独特な音を発しながら噛めないことはない。でも、少しするとアゴが疲れてしまいました。
嚙み切れないスジに切り目
そこで、スジに鱧の筋切りのように包丁を入れて焼くと良いのかなと、さっそくトライ。
すると、さっきよりも噛みやすくなりました。奥歯の方で、コリコリ、キシキシという独特な音は変わらず、これはこれで面白い食感です。お味はシマチョウ(大腸)の焼肉のよう。それに歯ごたえのあるスジが付いている感じです。やはりビールが欲しくなりました。
スジ肉料理の王道・スジコン
次に試してみたのは、ハラカワ料理の王道、煮物料理のスジコンです。
ハラカワは内臓のような臭みがないので、下処理で茹でるときに青ネギなどを入れる必要はないとのこと。そのまま水にいれ、肉を柔らかくしてくれる効果のある酢とお酒を少し加えて40分くらい茹でました。茹で汁を捨て、お出汁・酒・味噌・砂糖・みりんを入れた鍋でコンニャクとともに煮込んで完成です。
まるでイカのようにくるっと丸まったハラカワ。食べてみて、びっくりしました。焼肉のときとは比べ物にならないくらい柔らかくなっています。皮の周りの脂身はゼラチン質でトロットロ、皮はやはり奥歯で少しコリコリが残りますが、とても食べやすいです。ゼラチンとコリコリという、なんとも不思議な食感が印象的。甘辛の味付けでご飯が何杯も食べられそうです。
おでんのネタにしてみる
ネットの記事におでんのネタになっているハラカワを見かけたので、やってみました。
やはりコリコリした食感が独特です。スジの周りの白いゼラチン質がおでん汁を吸って、これまた美味です。今度は日本酒が欲しくなります。
炒めても美味しい!
1kgのハラカワといっても、牛5頭分です。まだ2枚ほど残っていたので、今度は趣向を変えて、炒め物にしてみました。
やはり、スジは硬いので、下茹でしてから使います。キャベツ、もやし、ニラを投入し、味付けはこのコーナーでお馴染み「特製 安堂畜産の牛焼肉用 専用タレ(しょうゆ味)」を使いました。
タレのお陰で味付けはばっちり。あとは、ハラカワとの相性ですが…。これがまたとても美味しい。まるでホルモン焼きのようですが、コリコリの歯ごたえはやはりハラカワ独特で、食べていて面白いのです。色々と作ってみましたが、実はこれが一番のお気に入りです。仕事終わりに、これを肴にビールを飲み干しました。
82歳の母が絶賛、ハラカワ・カレー
最後に、残ったハラカワでカレーを作りました。カレールーは市販のものを使っています。
堂々としたハラカワが迫力いっぱいです。何も伝えなかったらイカが入っているのだと思うでしょう。しかし、食べてみると、そのコリコリした食感に驚きます。ハラカワはしっかり下茹でしてあるので、噛み切れないことはありません。記者の母(82歳)も、「おいしいね」といって、ルーをお代わりしたほどです。焼肉で味わった脂身の美味しさもカレーに溶け込んだようで、いつもより濃厚な味わいのカレーライスになりました。
1頭からたった200gの希少部位です。確かに、そのコリコリした歯ごたえとアゴの奥に響く音は、例えようがありません。そして脂身も、ホルモン好きの人には、たまらない美味しさです。
安堂会長によると、知られざる希少部位は他にも色々あるようです。牛肉珍味の旅はまだまだ続きます。