アキレスの生は下処理が面倒。でも極上のご褒美が!

かれこれ4年前のこと、このコーナーで「ボイルアキレス」を取り上げたことがあります。すでに下処理が済んだもので、とても手軽な牛筋。おでんを作ったり、あっさりポン酢に和えてみたり…。やはり冬の時期でした。
今回は「生アキレス」です。安堂光明会長(安堂畜産)が袋に入れて打ち合わせの場に持ってきてくれました。白くてキレイ、というのが最初の印象。牛の足を想像しました。先の方が二股になっていて、蹄に続くのでしょう。まさしくアキレス腱です。
「今、肉のこーべや(安堂グループ直営小売店)の冷凍コーナーでたくさん売っていてね。ちょっと試してみてください」
ボイルアキレスとは違って、ちょっと手間がかかりそうだな、というのが記者の心の声でした。

▲生のアキレス
▲肉のこーべや玖珂店で販売中の冷凍の生アキレス

なにせ牛筋ですから、下処理が大切です。時短のために圧力鍋を使用しました。腱を適当な長さに切り(普通の包丁では歯が立たないので、肉屋御用達の筋切包丁を使用)ます。なお、お店で売っているのは既にカットしてあるのでご安心ください。

圧力鍋で下処理をする

まず、3分程度ボイルした後、流水でキレイに洗いました。
そして圧力鍋に投入し、水をたっぷり入れ、臭み取りのための長ネギと、ショウガのスライス、そして日本酒を入れて、加熱します。圧力がかかってから弱火にして45分くらい。圧力が下がって、フタを開けてみると、煮汁が白濁していて、なかなか良い香りが漂いました。アキレスはもちろんですが、この煮汁がなんとも美味しそうです。
調べてみると、アキレスは筋のなかでも特に美味しい出汁がとれる部位だそうです。ボイルアキレスだと、手間は省けますが、この煮汁は手に入りません。白濁した煮汁を前に、ニヤニヤしてしまいました。
※なんと、煮汁の写真を撮り忘れてしまいました。痛恨のミスです。すみません。

さっぱり牛筋煮込みに挑戦

下処理したアキレスを食べやすい大きさにさらにカットしたら、別の鍋で調理開始です。煮汁だけでは臭みがあるので、水2に煮汁1くらいの割合で混ぜました。そして本だしの素と鶏ガラスープの素を少々入れて、醤油と塩・胡椒で味を調えて、10分くらい煮たら完成です。最後に春雨を入れてみました。

▲さっぱり牛筋煮込み

透明がかったスープにアキレスが浮かんで、立ち上がる湯気と香りが食欲をそそります。まずはアキレスを口にすると、なかなかの歯ごたえですが、下処理のお陰でコリコリと音を立てながらも噛むことができます。この歯ごたえがたまりません。噛むごとに味わいが口に広がりました。
スープを飲んでみると、見た目の通り、あっさりして上品な味わいで、美味しい。でも、なんとなくもっとパンチが欲しい気がしました。もっとスープを味わう料理にしてみよう。

牛筋春雨ラーメン

そんなわけで、手元にあった春雨を麺に仕立てて、牛筋ラーメンを作ることにしました。
レシピは煮込みとあまり変わりません。違うのは、煮汁と水の割合を2:1。煮汁の方を多くして、ラーメンらしく醤油と塩・コショウも多めにしてみました。

▲牛筋春雨ラーメン

するとどうでしょう。狙い通り、濃いスープが完成。春雨をちゅるちゅるすると、ラーメンを食べている気分になりました。ただ、迫力ある写真のためにアキレスを大きめにカットしていたので、頬張ると当分の間、噛み続けることになりました。やはり筋なので、もっと小さくカットすることをお薦めします。

残りは牛筋シチューに

カレーにしようと思いましたが、ありきたりなので、シチューを作ってみました。もちろん、下処理のときの煮汁もしっかり入れています。

▲牛筋シチュー

シチューやカレーはどうしてもルーの味わいに味覚が引っ張られて、どれも同じような味になってしまいがちです。これもやはり、ザ・シチューという味ですが、アキレスの濃厚な出汁のお陰で、いつもよりうまみが増している気がしました。そして、何といってもその食感。柔らかさのなかにコリコリした感じがあって、一味違うシチューに仕上がりました。

下処理が手間だなと思っていた記者でしたが、アキレスはぜひ生から下処理をして、その煮汁を料理に使うべきだと学びました。肉のこーべや玖珂店の冷凍コーナーに並ぶ生アキレスを使って、ぜひ、みなさんチャレンジしてみてください。圧力鍋があれば、わりと楽に料理ができます。

では、牛肉珍味の旅はまだまだつづきます。