珍味中の珍味、牛の乳房を食べてみる
「牛肉珍味大図鑑」のタイトルに相応しい部位が登場です。なんと牛の乳房(乳腺)。食べてみようという発想すらなかったこれについて安堂光明会長は、「昔、これを焼いて食べてたよ。親父は商品化できないかと言っていたなぁ」と、懐かしそうです。
そこで、今回は店頭では見つけることのできない牛の乳房を特別に分けていただいてレポートすることにしました。乳房、別名をチチカブと言います。
袋を開けてびっくりしました。肉から血が出て貯まることはよくありますが、さすが乳房。貯まっていたのは牛乳でした。キッチンに牛乳臭が漂いました。
まずは炙り焼きしてみる
▲焼肉用にスライス
焼肉用にカットして、素材の味が良く分かるように塩・コショウだけで味付けして炙り焼きにしてみました。
▲牛の乳房の炙り焼き
口に入れるとすぐにわかりました。やはり牛乳の味がするのです。濃厚なチーズのような感じもします。そして、少しゴムのような食感です。
好みにもよると思いますが、記者としては、塩・コショウを効かせれば、つまみとして食べられるかな、という感じです。ただ、「これは美味い!」とはなりませんでした。牛乳の味わいがやはり気になり、なんだか不思議な感じがしました。
野菜と一緒に炒めてみる
野菜がお肉の牛乳臭を和らげてくれるのでは?ということで、野菜炒めに挑戦です。味付けに酒と塩・コショウ、そしてウスターソースも少々入れました。
▲牛の乳房と野菜炒め
確かに牛乳臭は和らぎ、食べやすくなりました。ただ、そのグニャっとする食感は変わりません。
一緒に料理していた同僚によると、「焼肉よりこっちの方が食べやすい」とのこと。確かにそうです。
ならば…、煮てみる
次に、醤油とみりんで甘辛に煮てみることにしました。スジではないので、長い時間煮詰める必要はありません。
▲牛の乳房の甘辛煮
美味しそうな見た目に、高まる期待。口に入れてみると…、「う~ん」。なんだかすき焼きに牛乳を入れたような…。なんとも言えない味わいになってしまいました。食感もゴムのような感じはぬぐえません。ハッキリ言って、これは失敗でした。
ここで妙案が浮かぶ
同僚がふと、「どうせ乳臭いのなら、クリームシチューにしたらどうですか?」と目を輝かせたので、早速、やってみることに。
▲牛の乳房のクリームシチュー
見た目はとっても美味しそう。香りもまさしくクリームシチューで、気持ちも盛り上がりました。さて、お味は…。
スープを飲んでみて、ちょっとびっくりしました。ルーは控えめに入れたつもりでしたが、スープが濃厚なのです。牛乳は足していますが、それ以上に牛乳とチーズの味わいが濃い感じで、とても美味しいです。提案した同僚はドヤ顔になっています。
そして肝心のお肉を口に入れた時、やはり、そのグニャとした食感は変わりませんが、煮込みで感じたような違和感はありません。
結論としては、「スープはとても美味しくなる。しかし、お肉はやっぱり鶏肉か豚肉には勝てないかな」。そんな感じでした。
試しに、味噌汁にしてみたら、びっくり!
牛乳やチーズは味噌と相性が良いと聞いたことがあります。そこで、最後に味噌汁にしてみました。乳房だけでは不安なので、イリコでも出汁をとりました。
▲牛の乳房の味噌汁
するとどうでしょう。意外にもこれが美味しいのです。記者としては、今回試したなかでは味噌汁が一番。美味しい出汁になっていました。
ただ、お肉のチーズのような味わいとグニャとした食感に変化はありません。つまり、乳房は味噌汁の出汁をとるために使うのだと、割り切った方がよいかもしれません。
牛の乳房を美味しく食べる方法はないかと、色々と試しているうちに、当コーナー最多の5種を作ってしまいました。
結果として、どの料理にも牛乳やチーズを投入したような乳の香りが加わって、独特な味になりました。クリームシチューと相性が良いのは当然のように思います。しかし、味噌汁にして美味しかったのは、驚きでした。
では、未知なる部位と料理を求めて、牛肉珍味の旅は続きます。