元気になる希少部位・脾臓(チギモ・タチギモ・チレ)
安堂光明会長が打合せ中、急に席を立ったかと思ったら、ビニル袋片手に現れました。その中身がこれ。牛の脾臓(ひぞう)です。脾臓は血液中の古くなった赤血球を処理し、新しい血液を溜める働きをしています。そんなことから、安堂畜産の地元・高森地区ではチギモ(血肝)と呼ばれています。平たくて長い形から「タチ(太刀)ギモ」と呼ばれたり、韓国語で内臓を意味する「チレ」という名でも知られています。
食品としてはタンパク質やビタミン、ミネラルが豊富。免疫システム、皮ふの健康、認知症予防にも役立つとか。
血液を溜めているために鉄分も豊富で、肝臓の5倍の鉄分、特に酸素を体中に運ぶヘモグロビンを増やす効果があるヘム鉄は約30倍も含んでいるとか。
体にいいことばかりのチギモですが、スーパー等に出回ることはほとんどありません。焼肉屋で見かけることもまれ。というのも牛1頭から1.5~2kg程度しか採れないし、新鮮でなければ臭みや苦みがあって美味しくないそうです。まさしく希少部位です。
記者も新鮮な内に冷凍し、いざ調理に挑みました。
まずは焼肉で
新鮮なチギモはレバーよりも臭みがないので、下処理はほとんど必要ないようです。薄皮を剥いでみようとしましたが、なかなか剥ぐことが難しいので、そのまま調理することにしました。
1cmくらいの厚みに切って、ごま油の塩・コショウで味付けました。見かけは、薄皮をかぶったレバーという感じ。レバーよりも鮮やかな赤色をしています。
口に入れて噛んでみると、味はレバーに似ていますが、もっと柔らかい食感です。新鮮だけに臭みもない。ただ、太刀で言うところの刃先に近いところは、繊維質で噛み切れません。先っぽは捨てて調理すべきでした。
特別に新鮮なら生でも食べられるとのことなので、焼きを軽めにして食べてみると、さらに柔らかくて味も濃厚。独特な癖があります。記者としては、よく焼いた方が美味しいと感じました。
天ぷらにしてみる
安堂会長のお薦め料理は天ぷらです。広島県ではこの天ぷらが郷土料理の一つのようです。ネットで検索してみると、ポン酢に七味唐辛子を入れたもので食べると美味しいとあったので、やってみました。
やはり焼肉と同様に柔らかな食感のレバーという感じです。ポン酢が味を引き締めてくれます。焼肉よりも美味しくいただけました。もっとカラッと揚げる腕があれば、さらに美味しくなることでしょう。
唐揚げにしてみる
天ぷら油をそのまま使って唐揚げにも挑戦。薄めに切ったものを温度高めでさっと香ばしく揚げてみました。
口に入れると、いつもの唐揚げ粉の強めの味わいに、安心感があります。噛んでみると、チギモ本来のふにゃっとした食感は消えて、噛み応えが出てきました。噛むほどに味が染み出てきます。これはなかなか美味しいです。ビールのつまみにも最高。もっとたくさん作れば良かったと後悔しました。
レバニラならぬ、チレニラに挑戦
レバーと言えばレバニラです。チギモ(チレ)は味も色もレバーに似ているからニラとの相性もいいはずということで、レバニラならぬチレニラを作ってみました。
どうでしょう。この食欲をそそる姿と香り。もやし・ニラと一緒にチギモを箸でつかんで口に頬張れば、甘辛いレバニラの幸せがそこにありました。ただし、チギモだから、少し柔らかな食感です。そして、レバーよりも臭みは少ない分、さらに万人ウケする食べやすさを感じました。
ご飯茶碗を片手にこれで夕飯をすませた記者でした。
チギモは、新鮮でなければ美味しくないと言われ、そのために市場に出回ることが滅多にない希少部位です。チレニラでお腹いっぱいになってつくづく思いました。「冷凍せずに、生のままで調理していたら、焼肉だって天ぷらだって、もっと美味しかったはず…」。
さて、チギモを食べたその夜は、たまっていた仕事を片付けて、いつもより遅く就寝しました。その翌朝のことです。寝不足でふらふらのはずなのに、これが不思議に元気なのです。
チギモをたくさん食べたからに違いないと、確信しています。
では、牛肉珍味の旅はまだまだ続きます。