実は希少部位・牛レバーを贅沢に食す

子どもの頃、レバーが嫌いだった記者ですが、ある年齢を超えてから、レバニラ炒めの美味しさに目覚めました。さらに年齢を重ねたとき、今度はレバ刺しの美味しさに衝撃を受け、メニューで見つければ必ずオーダーしたものです。ところが、2011年に起きたユッケの集団食中毒事件をきっかけに、レバ刺しを含む生肉はメニューからすっかり姿を消してしまいました。

さて、今回はそのレバーです。しかも、安堂光明会長が冷蔵庫から持ってきてくれたのは、「今日、捌いたばかり」という牛レバー。見たことがないほど、鮮やかな色味をしていました。

▲新鮮な牛レバー(生)

牛レバーは、レバニラ炒めはもちろん、甘辛の生姜煮でもおなじみの食材だと思っていましたが、会長に言わせると、とても貴重なのだそうです。
と畜場には保健所の検査官がいて、一頭一頭、レバーをチェックして、健康なものだけが市場に出回る仕組みになっています。というのも、肝硬変や脂肪肝が多く、食中毒の原因になる危険な寄生虫も隠れているケースがあります。肥育がうまくいってサシの入った良い肉質になっても、肝臓は脂肪肝で出荷できないというケースもあるようです。
会長から提供いただいたレバーは、そんな厳しい検査をパスした、ある意味で希少部位なのです。
「家でもレバーを食べたいけど、なかなか残ってなくてね」と、会長でさえ容易には手に入らないそうです。

さて、せっかく新鮮なレバーをいただいたのだからと、すぐに自宅で食べてみることにしました。

ほんの味見程度です。

▲表面の薄皮を剥ぐ

表面の薄皮を剥いだ後、薄くスライスしてフライパンで、塩・胡椒を振って炒めてみました。すると、これがビックリ。下処理もしていないのに、レバー独特な臭みがまったくありません。
「ああ、これが牛レバーの本来の味なんだ」と、感心しながらビールを飲みほした後、後悔しました。料理の写真を撮っていなかったのです。

さて、残りは本番の日のためにと冷凍保存することにしました。もしこの時、色々な料理に挑戦していたら、きっと最高のレバー料理になったことでしょう。悔しい!

牛乳に漬ける臭みとりは、効果があるのか?

1ヶ月ほど冷凍保存した後、料理に挑戦しました。どのレシピにも、臭みを警戒して水でよく洗うことと、牛乳に漬け置くように書いてあります。記者は、牛乳に漬けないものと、漬けたものを比較してみることにしました。

▲臭みとりのために牛乳に30分くらい漬けた
▲左端は牛乳に漬けてないもの。真ん中と右は牛乳に漬けたもの。

塩・胡椒でシンプルに味付けしたものを食べ比べてみると、その違いがわかりました。牛乳に漬けていないものは、やはり独特な臭みが若干残っています。これに比べて牛乳に漬けたものは、臭みがほとんど消えている。しかも、うま味が増しているような気がするのです。やはり、牛乳に漬け置いた方が良いという結果でした。
ただし、それでも冷凍前の新鮮なレバーの美味しさにはかないません。

安堂家のレバーの食べ方

「うちはね、素焼きした後に砂糖醤油かポン酢にくぐらせるのよ。その方が、焼いた時に焦げないから」と安堂会長の妻・朱美さん。そこで、安堂家のレバー焼肉を再現することにしました。

▲安堂家のレバー焼肉(焼いた後に甘辛醤油ダレかポン酢にくぐらせる)

なるほど、さっぱりした味わいで美味しくいただきました。記者は砂糖醤油(すりおろしニンニクも少々)が好みです。しかも、青じそに巻いて食べてみるとこれが絶品。暑い夏に冷えたビールと一緒に食べたくなりました。

冷菜にしてみる

ちょっと変わったレバー料理をと、ネットで調べてみたら、レバーの和え物のレシピを見つけたので作ってみました。
レバーを茹でて流水で洗い、よく水切りしたものにキュウリとタマネギを入れて、かつお節とポン酢で和えた後、冷蔵庫で冷やしました。

▲牛レバーの和えもの

ちょっと七味を振りかけて食べてみると、さっぱりした味わいのなか、レバーはしっかりとレバーのまま。まさしく、体に良くて、気分もシャキッとする料理になりました。これもビールが合いそうですね。

レバーたっぷりのレバニラ炒め

最後に記者の大好物、レバニラ炒めを作りました。レバーは片栗粉をまぶし、甘辛に煮て、しっかり味を付けてから、もやしとニラに合わせました。オイスターソースと甜麺醤(テンメンジャン/中華の甘辛味噌)がいい仕事をしてくれました。

▲レバーたっぷりのレバニラ炒め

レバーがたっぷり入っていますが、牛乳に漬けこんでいたおかげで臭みもなく、とても美味しくいただきました。ご飯が何杯でも食べられる料理です。

レバーは貧血予防に効果のあるビタミンB12、抗酸化作用のあるビタミンEが豊富に含まれています。滋養強壮と老化防止に役立つレバーをたくさん食べて、夏の暑さを吹き飛ばしたいものです。ただし、ビールの進みすぎには要注意ですね。
それにしても、レバ刺しのレポートができないのは、とても残念です。改めて、レバ刺しの解禁を切に望みます。

では、牛肉珍味の旅はまだまだ続きます。