禁断のホルモン、マルチョウの誘惑
今回は牛の小腸を取り上げることにしました。みなさんは牛の小腸の長さを知っていますか? 調べてみたらびっくり。なんと約40mもあるそうです。ちなみにヒトの場合には5~7mです。草食動物ほど、腸は長いようです。別名ヒモと呼ばれるのもわかる気がします。
安堂グループ直営の肉のこーべや玖珂店で国産牛小腸(生)の1キロパックを購入して、いざ、調理開始です。
どっちが美味しい? マルチョウ(丸腸)と丸ではない腸
ご覧の通り、安堂畜産が提供する小腸は全て丸い筒になった小腸です。これをマルチョウ(丸腸)と言います。てっきり、長い小腸を食べやすいように切っただけなのだと思っていましたが、それは大間違いでした。加工場でわざわざ、チューブのような小腸の外側と内側をひっくり返しているのです。ひっくり返すと何が良いかというと、腸の中の汚れや臭みをしっかり洗えるから。そしてもう一つ、重要な意味があります。それは、小腸の旨味の特徴である脂を筒のなかに閉じ込めることができるからです。
ということで、マルチョウと、マルではなくて切り裂いて処理された一般の小腸を食べ比べしてみました。
結果は、マルチョウの勝ち。マルチョウは噛むと筒の中からジュワッと甘味のある脂が染み出て来る感じなのです。
「昔はね、会社の賄いでよくマルチョウを焼いて食べたよ。そりゃあ、美味しかった!」と安堂光明会長にとっても、懐かしくて、忘れられない味わいのようです。
特に安堂畜産のマルチョウはよく洗ってあるようで、さらっと洗って、長いものは半分に切って塩コショウをして焼けば、臭みもなく、美味しくいただけました。また、コチュジャンとニンニク、酒に30分くらい漬け込んだものを焼くと、これまた美味。ビールのあてに最高です。
マルチョウでもつ煮込み
味噌仕立てのもつ煮込みにも挑戦しました。5分ほど煮て下処理をした後、野菜やコンニャクと一緒に煮込むこと30分くらいで仕上がりました。調味料はシンプルに味噌・みりん・ハチミツ、酒もたっぷり入れています。
いざ、実食してみると、想像していた通り、濃厚な味わいです。マルチョウを噛むとやはりジュワッと脂が染み出てきます。そして、弾力のある食感が特徴的です。
そして、いい色に染まった大根を口にしたとき、思わず笑顔になってしまいました。もつ煮込みなのに、主役のホルモンよりも格段に美味しいのです。きっと、マルチョウが抱きかかえていた脂の旨味が、この大根に吸収されたのでしょう。
「脂濃いいのはちょっと…」と言っていた女性スタッフも、この大根の美味しさにはびっくり。間もなく、大根の争奪戦が始まったのでした。
圧巻なのは、もつ鍋
最後にニラをたっぷり入れたもつ鍋を作ってみました。ネットで調べたレシピのなかで、最も簡単なそれは、調味料が麺つゆだけというもの。本当にそれで美味しくなるのかなと半信半疑で挑戦。しかし、これが絶品でした。
レシピはいたって簡単です。マルチョウを5分ほど下茹でしてアクをとります。そして鍋に麺つゆ(2倍濃縮)を150cc、水は50ccくらい。そこに鷹の爪とニンニクのスライスを入れ、マルチョウとキャベツ・もやしを入れて煮ます。野菜に火が通ったらニラも投入して出来上がり。辛いのが好きな記者は鷹の爪をたっぷり入れました。
するとどうでしょう。マルチョウから良い出汁が出ているからか、スープがとても美味しく深い味わいなのです。とても麺つゆだけとは思えません。マルチョウも、噛めば噛むほど味が増すような感じです。勿論、野菜もたっぷりスープを吸って美味しい。これはご飯も酒もすすむ最高の逸品でした。
最後にマルチョウを食べるときの注意点を書き添えておきます。それは、脂が多いだけに超高カロリーということ。100gでなんと287キロカロリーもあります。それに比べて大腸(シマチョウ)は100gが162キロカロリーです。だから、いくら美味しいからと言って、マルチョウばかりを食べていると大変なことに…。まさしく禁断のホルモンです。
中年太りが気になる記者としては、ホルモンを食べるなら、マルチョウもシマチョウも入ったミックスを買うことにしようと、決めたのでした。
では、未知なる部位と料理を求めて、牛肉珍味の旅は続きます。