テール肉で、極上のスープ、そして魅惑の〇〇〇!の巻
今、切って来たよ!
テールとは、言わずと知れた尻尾(しっぽ)のこと。牛の尻尾はおよそ60cmの長さがあり、背骨のように数センチ間隔で骨がつながっています。
ある日の打合せのとき、安堂光明会長はおもむろに席を外すと、ビニル袋に何かを入れて戻ってきました。
「今、関節のところで切って来たよ」と、見せてくれたのが、このテールです。
テールスープに入っている肉片しか見たことのなかった取材班は目を見張りました。鮮やかな切り口にも感心したものです。
「硬いからね。長い時間煮込んだらいいよ。圧力鍋を使ってもいいが、それじゃあ硬いかもしれんな」と、会長。
すると、会長夫人が通りかかって、
「まあ3時間煮込めば、柔らかくなるわよ」。
そんなわけで、テールスープを作ることになりました。ついでにできることなら、「ラーメンも作ってみたい!」。根っからの食いしん坊が顔をのぞかせました。
下処理がスープの出来を左右する
①鍋にテールを入れて、肉がつかるほどの水をそそいで火にかけます。煮立って3分程度。表面は灰汁だらけ。
灰汁も煮汁もろとも捨てて、流水でよく洗います。
このとき、太い血管の血をよく洗い流すのがコツのようです。
②洗ったテールを再び鍋に入れ、水に浸します。臭みとりのために青ネギと生姜を入れて、煮込みます。
弱火で2時間半~3時間。この過程に圧力鍋を使ってもよいかもしれませんが、そんな時短は今回はなし。安堂会長の言いつけを守りました。
煮込む途中、あまり水を足さない方が良いようです。出汁が薄まってしまいますから。
脂が出て来るので、余分な脂は除きますが、これも除きすぎると旨味が逃げる気がします。
煮た後、青ネギなどを除いて、仕上がったスープがこちらです。
テールスープを味わう
1.テールスープの定番、塩と胡椒のみで仕上げてみました。
この透き通ったスープは、丁寧に灰汁をとり、3時間煮込んだ成果です。塩と胡椒でシンプルに味付けして、大胆に骨付きのテール肉を浮かべて、いざ実食!
濃厚なスープの味わいに、「おおー!」と思わず声が出ました。まさしくテールスープ。しかも上品な味わいでした。
難しかったのは、塩加減です。味見をしながら慎重に塩を入れて、好みを探りました。
スープを飲みながら、骨付きの肉にしゃぶりつきました。骨の周りの肉は美味いといいますが、特に関節のゼラチン質が最高でした。
2.安堂家伝来、味噌仕立てにしてみました。
予想では、味噌が強くて、せっかくのテールの味わいが飛んでしまうのではないかと心配しましたが、それは杞憂に終わりました。
不思議なことに、すっきりした味わいで、なおかつテールの風味がちゃんと生きている。意外な美味しさに、驚きました。
安堂家では、一家が集まるときには、尻尾5本くらいを一気に煮込んでこの味噌汁をつくるとか。畜産を生業にする家族ならではです。
スライスしたテール肉を焼肉で味わう
安堂会長は首をかしげながら、こう言ったものです。
「焼いたら硬いとおもうが…、不思議に売れる。どうやって食べてるのかなぁ」。
販売元の会長が、なぜ売れるのかわからないというこの商品。パッケージには「焼肉用」と書いてあるので、塩と胡椒を振りかけて焼肉にしてみました。
すると、どうでしょう。
確かに硬さはありますが、歯で裂けないほどではありません。それよりなにより、これがまた美味しいのです。ちょうど、骨付きカルビをちょっと硬くした感じとでもいいましょうか。
特に骨の周りのお肉や脂身は濃厚な味わい。これは売れるはず。会長にも食べて欲しいと思った次第です。
〆のラーメンとはこのこと。
ラーメンらしいスープにするため、ニンニクを一片、匂いを抑えるために切らずにそのまま投入して数分煮込みました。これに塩と胡椒、そして醤油を少々。
こうして出来上がったのが、テール・ラーメンです。メインのトッピングはもちろん、テール肉です。
濃厚なテールスープの味わいながら、スッキリしたスープ。麺との相性もばっちりで、トッピングの肉もスープが染みて美味しくいただきました。
残った材料で焼きそばを作ったら…、びっくり!
〆の〆というわけで、残った麺とテールスープにテール肉、これらで何か作れないかということで、焼きそばをちゃちゃっと作ってみました。
味付けは塩・こしょうと醤油のみ、テールスープを入れるのが、ミソです。
すると、びっくり!美味しかった。
同僚のみんなが、「これが一番おいしい!」と口をそろえたのです。
テールスープが麺に染み込んだのでしょう。もしかしたら、今まで食べた焼きそばのなかで一番かもしれません。
テールスープをつくったら、ぜひ、試して欲しい逸品です。
今回はテールを使った料理に挑戦しました。
終わってみれば、予定外の4品を作って実食。テールを文字通り骨までしゃぶり尽くしました。
テール肉そのものは、なかなか店頭ではお目にかかれませんが、「肉のこーべや」でなら、手に入ることも多いでしょう。
では、未知なる部位と料理を求めて、牛肉珍味の旅は続きます。