失敗を糧に「カッパ」に再挑戦!

インターネットで「カッパ 牛肉」で検索をしてみると、当Webサイトの記事(2022年5月)が1位か2位辺りにヒットします。これまで様々な部位をテーマに料理に挑戦してきましたが、この記事はダントツ。常にたくさんのアクセスを得て、当Webサイト全体のアクセスを牽引しているのです。
これは喜ばしいことのように思えますが、実は違います。この記事のタイトルは「カッパという名の部位を調理・実食! 後で重大なミスが発覚」。つまり、記者が料理に失敗した回なのです。
「他人の不幸は蜜の味」と言います。たくさんのネットユーザーがこの「重大なミス」という文言に惹かれたのではないかと推測しています。ああ、なんという皮肉でしょう。

そこで、2年半ぶりに「カッパ」に挑戦することにしました。さて、リベンジやいかに?

安堂畜産が関わった食肉に関するイベントに関して、こんな話を聴きました。
「鉄板で焼肉をやるときにね。カッパは硬くてそのままじゃあ難しいから、鉄板の隅っこに避けてたんだよ。そうしたら、カリカリに焼けてね。それを小さくカットして食べてみたらね。美味かったんだよ。びっくりした」(安堂卓也・安堂畜産社長)

日々、お肉の美味しさに向き合う社長が「美味かったんだよ」と驚きまじりに言うからには、相当美味しかったはず。
まずは、そのカリカリ焼きから挑戦しました。

「カッパ」牛の腹の皮筋
▲「カッパ」牛の腹の皮筋

ちょっとその前に「カッパ」についておさらいしておきます。
カッパは牛の腹の表面にある皮筋(ひきん)のことです。半身で吊るされたお肉の腹が赤くなっているところ。この姿が雨合羽を羽織っているように見えることから「カッパ」の名がついたようです。
通常は店頭に「カッパ」として並ぶことはありません。焼肉屋さんで稀にその名でメニューに並ぶことはあるようです。というのも、その肉質は筋があって硬くて、肉も薄いから。ミンチにすることが多いと聞きました。

名付けて「カッパのカリカリ焼き」

カッパの肉厚のところは、焼肉用にとっておいて、肉が薄いところを使いました。テキトーに切って、フライパンに投入します。コツとしては、脂身が多い方を下にして、脂を溶かします。そして弱火で、じっくり炒めるというよりも、その油で素揚げするようなイメージです。それこそ15分くらいじっくり、ときどき裏返しながら炒めたと思います。

▲カリカリ焼き。まず脂面を下にして脂を溶かしてからじっくり焼く

これを温かいうちに、薄くスライスします。この時、前回の重大なミスを繰り返さないために、慎重になりました。肉の筋の流れを見極めて、それを断つように包丁を入れること。しかも、薄めに…。
スライスしたものに塩と胡椒を振りかけて、いざ実食!

カッパのカリカリ焼き
▲カッパのカリカリ焼き

なんということでしょう。柔らかくはないけれど、ほどよい硬さの食感があります。そして、噛むごとにカッパ独特の旨味が口に広がりました。
「これは、美味い!」
食いしん坊の同僚にも食べてもらったら、「これは…いいですねぇ」とモグモグ…。二人でやめられない、止まらない状態になりました。ここにビールがあれば、即席の忘年会をしたいくらい。
この一品目で早くも勝利宣言が飛び出しました。

前回、余分な脂を削ぎ、白い膜も剥ぐために、随分と苦労して、結局、中途半端なまま調理し、切り方にもミスを犯していました。しかし、この調理法はいたって簡単です。脂もそのまま使いますし、白い膜もそのままにして、ただじっくりカリカリに焼くだけ。スライスの方向さえ間違わなければ、こんなに簡単で美味しいおつまみはありません。
みなさんぜひ、お試しください。もし、カッパが手に入ったらの話ですが…。

焼肉にしても美味!

前回、焼肉で大失敗していますから、今回は慎重にと、余分な脂を削ぎ落しました。そして白い膜も剥ごうとしますが…、やはり記者の手には負えません。その薄い膜は包丁で削ごうとすると、肉まで削ぐことになり、もともと薄い肉がもっと薄くなります。
そこで、膜はそのままに、表面に切り込みをいれる隠し包丁を試しました。裏にも表にも切り込みを入れて、やはり肉の筋を断ち切るようにスライスしました。

焼肉用にカットした肉
▲焼肉用のカット(手前は薄くスライス、後ろは隠し包丁を入れたもの)
カッパの焼肉
▲カッパの焼肉

塩と胡椒でシンプルな味付けで焼いてみると、これがまた「美味い!」。
前回のようにグニャグニャしてゴムのようで噛み切れなかったのが嘘のようです。コリコリした程よい食感もあり、やはり、噛むほどに旨味がジュワーと出てきます。カリカリ焼きのときよりもジューシーな感じです。
料理のキモは、隠し包丁と、肉筋を断つスライスでした。

絶品、「カッパぽん」と「カッパスープ」

なにやら面白いネーミングになりました。この2品は同時に作ることができました。
余分な脂を削いで、まずは肉筋と並行に5センチ幅くらいにカッパを切り分けます。5cm×15cmくらいでしょうか。それを10分ほど煮込んで、あく抜きをしました。
その後、肉を流水で洗い、今度は肉筋を断つようにスライスしました。(ボイルした後の方が余分な脂も削ぎやすい)
そして、時短のために圧力鍋の出動です。圧力がかかってから15分程度の加熱でした。もし、圧力鍋がなかったら1時間以上はかかったと思います。

「カッパぽん」のために、カッパを小皿に取り分けます。そして大根おろしと小葱をパラパラしてポン酢をかけたら完成です。

カッパぽん
▲カッパぽん

あっさりしたポン酢の味わいにカッパの濃厚な旨味が口に広がりました。これは日本酒があうかもしれませんね。ヘルシーなカッパ料理です。

今度はスープを仕上げます。
カッパの煮汁はそのまま使って、具材を足し、ちょっとだけ和風出汁を加えて煮込みました。味付けは塩と胡椒だけです。

カッパスープ
▲カッパスープ

あっさりしたスープですが、カッパの旨味が染み出ていて、とても美味しいです。いくらでも飲めるような優しいスープになりました。寒い冬にぴったりです。

静かにガッツポーズ!

カリカリ焼きにはじまり、焼肉、カッパぽん、カッパスープと、気付けば4品を作りながらその都度、試食をしてきました。そのたびに勝利の味わいを感じ、静かにガッツポーズしたのでした。
結論。カッパは切り方さえ間違えなければ、白い膜など気にすることはありません。隠し包丁とスジを断つスライス。これで、コリコリ食感とともに、なんとも言えない独特な深い旨味が噛むほどに味わえます。しかも、今回のお肉はホルスタイン。乳牛の役割を終えた牛のそれです。もし、黒毛和牛だったらどうなのだろうと、想像してしまいます。
ただ、問題なのは、お肉屋さんの店頭になかなか並ばないこと。もともと1頭あたり3~4kgくらいしか採れない希少部位でもあります。
もし、どうしても試してみたい方は、安堂畜産直営の「肉のこーべや玖珂店」の店頭で相談してみてください。取り置いてくれるかもしれません。

では、牛肉珍味の旅はまだまだ続きます。