安堂グループの歴史物語[アナザーストーリー 12]

安堂グループの歴史物語 タイトル画像

 高森牛の歴史は明治初期に遡ります。その長い歴史のなか、山口県東部随一の牛肉生産を誇る安堂の名が登場するのは、意外にも戦後間もなく、昭和22年のことでした。
これは、現在の安堂グループに至る道のりを辿った歴史物語。そこには、激動の時代を生きた5つの世代、それぞれの苦難と歓喜の秘話がありました。

アナザーストーリー 12

「商品と地球を守る包装技術」

 安堂グループは、取引先からの要望に応えることにより、発展を遂げてきました。消費者に人気の部位を多量に必要とするスーパーの要求には、豚肉の加工場にまで足を運び、部位別の商品開発を実現しています(「ちょっと行ってこい」第11話)。特に、1982(昭和57)から始まった山口中央生協(現・コープ山口)との取引からは、高度な要求を受け、その度に解決策を模索し、困難を乗り越えてきました。
 「商品パックのなかに、虫が入ってたぞ!」というクレームをきっかけに、本社工場をウンドウレス(窓ナシ)に新設したのもその一つです(「虫と新社屋の関係性」第17話)。
 その頃、もう一つ、やはり生協から、商品パッケージにかかわる重要な問題が報告されていました。

「ドリップが漏れていたぞ!」

 「ボックスのなかで、暴れたんでしょうね。お肉のドリップが漏れて、他の商品を汚したようですね」。
 生協の宅配事業では、発泡スチロールのボックスに商品を詰め合わせて配送されます。持ち運びの揺れや傾きによって、精肉のドリップがラップフィルムの合わせのところから染み出たり、剥がれてしまったのかもしれません。
 1993年(平成5)、本社工場を建てようと計画していた頃のこと、安堂光明(現会長)は思い切って、包装設備を一新することにしました。しかも、当時の先端技術を取り入れて、商品の消費期限も延ばす策に出たのでした。

ストレッチ包装からピロー包装へ

 従前からの包装方法は、ストレッチ包装といわれています。発泡スチロールのトレーに商品が入り、その上をラップフィルムで覆い、底部で合わせて密着させます。作業が簡単な上に、店頭で並べて販売するには、かさばることもなく便利です。ただ、消費者にとっては、商品の水気がラップの隙間から染み出る心配がありました。だから、ビニル袋にも入れて持ち帰ることが習慣になったのです。
 新たに導入を決めた設備は、横型ピロー包装機といわれるもの。
 それは、商品全体をラップフィルムの筒のなかに入れ、前後をシール加工するもの。枕のような形になることからその名が付いています。その仕上がりはまるでスナック菓子の袋のようです。
 これなら、フィルムが破れることがない限り、ドリップが漏れることはありません。

さらなる利点・ガスパック

 そしてこの機械には、さらに新しい機能・ガス充填機が加わりました。それは、不活性ガス(化学反応の性質が低い気体)を商品パックの中に充填し、消費期限を延ばすことを可能にするもの。通常は2~3日の消費期限が、さらに1~2日延びることになります。しかも、気体の漏れを少なくするために、使われるラップフィルムも厚く、バリア性能に長けた頑丈なバリアフィルムを使用することになり、さらに丈夫な包装に仕上がるのです。

安堂グループの歴史物語第12話 現在のガスパック包装ライン・手前は金属探知機
▲現在のガスパック包装ライン・手前は金属探知機

安堂グループの歴史物語第12話 ガスの充てん機
▲ガスの充てん機

 1993年(平成5)、新社屋・加工場は完成しました。ウインドウレスで加工場全体がすっぽり冷蔵庫に入ったように徹底した温度管理のなか、最新鋭のガスパック包装機が稼働しました。
 「丈夫な上に消費期限が延びる。これはまさに一石二鳥の投資だ」、光明は目を細めたものです。
 特に、消費期限が延びることは、精肉の加工工程や労務管理にも大変なメリットをもたらしました。注文が集中する繁忙期になると、以前は夜遅くまで作業していたものが、少し前から加工をして準備することができるようになったのです。

「嫌な匂いがする」

 さて、ドリップが漏れるというクレームは無くなり、ほっとしていたのも束の間。新たなクレームが寄せられるようになりました。
 「包装を開けると、嫌な匂いがする」。
 原因は、消費期限を延ばすために充填していたガスの成分でした。ガスには二酸化炭素と酸素が混合されていました。二酸化炭素には静菌・防虫の作用があり、酸素には肉を赤く発色させる効果があります。この内の二酸化炭素が、肉の成分と反応して匂いを出していたのです。
 匂いを消すためにアルコールを使用するなど、様々な方法を試してみましたが、うまくいきません。結局、匂いの元になっていた二酸化炭素を窒素に替えることにより、解決をみたのでした。

30年に3度の更新

 新社屋の完成から約30年。その間に包装機は3度の設備更新を経て、その都度、進化してきました。
 ピロー包装により、スナック菓子のような袋状に仕上がっていたものが、トレーに密着するガスパック・シュリンク包装に替わりました。店頭に並べても扱いやすくなり、現在では店頭商品のほとんどがこの方法によるものです。
 包装機械は1台が2,000万円という高価なもの。しかも、大小の商品パックに対応するために2台を備える必要があります。しかし、さらなる投資が構想されています。
 それは、発泡スチロールのトレーを使わない方法。「深しぼり」と言われるそれは、プラスチックシートに商品を載せ、フィルムを熱接着するもの。ハムやウインナーではよく見かける方法です。これを精肉商品にも導入し、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献できたら…。安堂グループの包装技術の進化はまだまだ続きます。


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